精油の安全で効果的な使用方法:あなたが知らなければならないのに、聞かされていない事
Safe and Effective Use of Essential Oils: What You Need to Know about What You’re Not Being Told
20年前のアロマセラピーの世界は、この療法を熟知している数少ない代替療法家を除いて一般にはほとんど知られていませんでした。それが現在では、年間数百万ドルのマーケティング市場へと変貌しています。これらの産業を担う一部の巨大企業では、市場原理を最優先に考えるあまり、真のアロマセラピーの価値を破壊しています。この現実から目を覚ます時が来ています。安全で効果的な精油の使用を目指しているアーティザンも、これらの巨大企業のマーケティング戦略と底なしの貪欲さを持つ巨大企業によって、その立場を脅かされています。
■間違えてはいけません
あなたが精油の消費者であるのならば、この種の企業には注意が必要です。私の意見では、この種の企業は、あなたやあなたの家族に対して、たとえ健康被害を及ぼすことがあったとしても、これらの企業は自社に不利なことは言及しません。広範囲にわたる商業的なマーケティングによって消費者のアロマテラピーに対する考え方は変化しています。過去何十年にも渡って熟練したアロマセラピストたちは安全かつ効果的な治癒の促進を目的に厳選された精油を使用してきました。しかしこのようなマーケティングの影響で、特別な訓練を受けていない消費者たちが、必要のない高いリスクを取らされ、なおかつ不必要かつ高頻度な精油の使用法を推奨されています。これらはすべて、そうした巨大企業の利益へと繋がっています。
精油を販売するうえで最も効率的な戦略とは、精油の過剰な使用を奨励し、安全か否かに関わらず、あらゆる形での使用を推し進め、実証されていない「治癒」の主張をすることです。残念ながらこれらのマーケティング戦略は成功しています。なぜなら大半の消費者たちは精油がどのように身体に作用しているのか、実際の科学的知識を十分に持たないためです。私は医師として身体に対する精油の生理作用と生理学的、薬理学的知識を十分に理解しています。同時に精油による効果や、その使用法について、不正確で危険なアドバイスによって一般の人々の抱く「自然由来、天然成分、ピュアナチュラルである」事への信頼が悪用されている事実も知っています。
精油は適切に使用されると副作用のリスクは非常に低く、そして多くの恩恵をもたらします。精油使用における重要な概念として、「それが適切に使用されている」ということです。これは、あなた自身がアロマセラピーについて「誰に聞き、何を信じるか」が大切になってきます。幸いにもアロマセラピーについて十分な知識を持っており、危険な方法を推奨することのない、欺瞞的な主張をしない人たちによって運営される倫理的な精油メーカーは、まだまだ多く存在しています。
下記で説明する簡単なアロマセラピーのガイドラインを参考に巨大企業の誇大広告に惑わされることなく慎重に精油メーカーを選ぶことでアロマセラピー本来の恩恵を得ることができます。
■精油を経口摂取することについては、その大半が誇大宣伝です
これについては、なぜそれが真実であるかをここで説明し、精油の使用について適切な判断をするための必要な知識を身につけて頂きたいと思います。前述のような企業によって精油の経口摂取が「より良い」とされているのは精油を飲み下すことで、より多くの精油成分を血流に取り込むことができると考えられているためです。実際にこの方法では約96%の精油成分が血液に吸収される事がありますが、これは何種類かの精油成分にのみ当てはまることです。あなたが聞かされていない事は、他の多くの精油成分は実際には胃酸によって破壊されてしまうという事実です。
ラベンダー精油がその良い例です。ラベンダー精油の成分のうち、最も治療的に重要な成分としてエステルがあります。けれども、エステルは胃中でほぼすべてが破壊されます。もしも、あなたが飲み水にラベンダー精油を加えているのならば、あなたはそれを下水に流しているだけなのです!さらに、精油成分の一部は、経口摂取すると第1相反応と呼ばれる肝臓代謝によって成分が減少もしくは破壊されます。そして、ほとんどの場合において、こうした経口摂取にどの程度の問題が隠されているかを知る十分な研究は行われていません。
巨大企業が一般の人々に教えたくないこととして精油を芳香成分として吸入した場合でも血流に実際に吸収されるということです。実際の研究によれば大半の精油の成分のうち60%〜70%が血流に吸収されることが示されています。これは先ほどの経口摂取による96%ほど高率ではありませんが、十分と言える高い吸収率です。そして、精油によるリスクは経口摂取に比べてはるかに低くなります。さらに、通常の吸入では経口摂取と異なり、精油が胃や肝臓を通過する際に、精油の成分が破壊されたり、減少したりすることは決してありません。
■嗅覚神経について
精油による効果の大半は、香りを吸入することで鼻から脳に芳香がダイレクトに伝わり、嗅覚神経を刺激する事で起こります。吸入することで、精油が血液中に吸収されることなく、中枢神経系、免疫系、内分泌系などに影響を及ぼすことが出来ます。あなたの飲み水に精油を加えて飲む方法や、特にカプセルで経口摂取した場合には、あなたはこれらのアロマセラピーの利点を失ってしまいます。
■アロマセラピー(芳香療法)と呼ばれる事の意味
精油が発揮する有益な作用の多くは芳香成分を吸入することで起こる嗅覚神経の刺激を経由しています。私の意見では、巨大企業のマーケティングによって喧伝された経口摂取による使用は、精油とアロマセラピーに対する十分な知識を持たない方たちを利用する詐欺以外の何物でもありません。
■精油を経口摂取しないでください
精油の経口摂取は有害な反応のリスクを高めるため、精油の十分な知識がない人たちにとって大変危険です。数滴の精油であっても精油を経口摂取すると、胃腸管を刺激し、組織損傷の危険性を高めます。さらに、精油の経口摂取後に吐き気や嘔吐も頻繁に報告されています。臓器毒性、胎児毒性(子宮内の胎児への毒性)および薬物との相互作用に対するリスクの増加は、より多い「用量」の精油の経口摂取の問題としてしばしば提起されています。
1日に数滴の精油を経口摂取したとしても、ほとんどの場合では外用に比べてより良い結果を得ることはできません。つまり、精油の経口摂取は行う必要が全く無いのです。
■精油を選択する時はラベルに「外用に限る」と記載されているメーカーを選択してください
責任のある精油メーカーは、自社ラベルに経口使用に対する注意喚起を必ず表記しています。これはそうしたメーカーが販売している精油が経口摂取を推奨するメーカーの精油に比べて品質が低いからではありません。責任のある精油メーカーは、精油の正しい知識を持たない消費者が精油を経口摂取することによって不必要なリスクを被ることを知っているからです。
繰り返して伝えます。精油を経口摂取しないでください。
■身体に使用する時には必ず精油を希釈してください
責任のない一部の精油メーカーでは、希釈されていない精油の使用を推奨しています。精油を希釈せずに用いた場合、強い皮膚炎症を引き起こす可能性があることが、いくつかの症例で確認されています。アロマセラピストやアロマセラピーの専門家の間では、このような深刻な結果がよく知られています。このような強い皮膚炎症は非常に刺激の強い精油でしか起こりませんが、刺激が穏やかだとされている精油であっても継続的に使用した場合には皮膚感作反応を起こすことが報告されています。もしも、あなたがこれまで感作反応を起こすことなく希釈しない精油を長期間使用してきたとしても、これから先に問題が起きないわけではありません。アレルギー反応の一種であるこれらの感作反応は非常な不快さを伴います。さらに、ある種の精油に含まれる特定成分に敏感になると、他の感作を発症する可能性も高くなります。精油を継続して使い続けたいなら、それらを希釈せずに皮膚に使用しないでください。ほとんどの場合、推奨される希釈濃度は2.5%ですが、安全に使用するためには、精油をさらに低濃度に希釈する必要があります。
■あなたが使おうとする精油について安全な使用方法を事前に確かめてください
良いアロマセラピー書籍を購入し、それを参照するのも良いでしょう。精油使用に関して特に重要な安全上の注意は子どもに対する使用です。子どもに精油を使用する際には、十分に配慮して使用するようにしましょう。アロマセラピー専門家やアロマセラピストに相談することなく、1歳未満の乳児に精油を使用しないでください。
■精油は節度を持って使用してください
適切な量の精油を使用することで最高のアロマセラピー効果を得る事が出来ます。ディフューザーを使う場合においても、多量および長時間の使用はしないでください。精油を吸入すると、その瞬間から、その香りに対する嗅覚の敏感さが低下(※閾値(いきち)が上がる)していきます。嗅覚の敏感さが低下することで精油ユーザーたちは過度に精油を使用する傾向があります。
デュフィ―ザーなどで過度に拡散された精油は呼吸器官の炎症や慢性的な毒性を引き起こす可能性があります。過度な量の精油を継続して使用した人は、皮膚刺激、感作および慢性的な毒性を発症する危険があります。
精油に対する最小限の常識と安全面への意識を持つことで、精油はとても安全に使用できます。そして、ホリスティックな健康を担う自然療法として大きな貢献をすることができます。あなたが精油の消費者としてさらに賢くなることで真のアロマセラピーの実践と、その普及に大きく貢献します。
記事監修:ジョーイ・パワー医師(2017年4月6日)
翻訳監修:堀弘明・堀浩子