フランス産ラベンダーについて

French Lavender

■目次

  • フランス産ラベンダー精油
  • アロマセラピーに最もふさわしい「ラベンダー・トゥルー」
  • その他のラベンダーについて
  • ラベンダー・トゥルー種
  • 6種類のラベンダー精油 別ページ参照
  • 製造方法
  • ラベンダー精油の特性
  • 伝承と歴史
  • 伝統的なアロマセラピー
  • 中医学におけるラベンダー精油
  • 安全に関する現在の情報

 

 

■フランス産ラベンダー精油

フランス産のラベンダー精油ほどアロマセラピーにふさわしいものはありません。特長ある美しい芳香と優れたリラックス作用で知られるフランス産ラベンダーは、すべての精油の中で最も広く使用されています。ラベンダー精油はアロマセラピーにおいて非常な人気を誇りながらも、この精油を購入しようとする人たちのなかにはラベンダー精油を購入する事の難しさを知らないように思うことがあります。その理由として、下記の3つが挙げられます。

 

  1. ラベンダーにはいくつかの種類があり、それぞれの香りと作用は異なっています。
  2. 同じ種であっても、異なる場所で栽培されたラベンダーから抽出された精油の香りと作用には違いがあります。
  3. 「ラベンダー精油」として一般に販売されている精油のなかには、実際はそうでないものも含まれている可能性があります。

 

アーティザンがフランス産ラベンダーやブルガリア産ラベンダーなど6種の異なるタイプのラベンダー・トゥルー精油を扱っている理由や、あなたの目的に最も適したタイプを選ぶ方法はこちらのページにて説明しています。

 

 

■アロマセラピーに最もふさわしい「ラベンダー・トゥルー」

学名がLavandula(ラウァンドゥラ)で始まるラウァンドゥラ属には多くの異なる種類があり、それらにはラベンダーという共通名が付けられています。実際、この属には30種以上の植物があるため混同されがちです。アロマテラピーにおけるリラックス作用や睡眠に誘う特性で知られるラベンダー種は、現在の植物学者によってLavandula angustifolia(ラウァンドゥラ・アングスティフォリア)と呼ばれています。これは一般にラベンダー・トゥルーと呼ばれており、私の意見では、これはあなたが最高品質のラベンダー精油を求めるのならば、選択するのに最もふさわしいラベンダーと言えます。

 

過去においては、私たちが現在「ラウァンドゥラ・アングスティフォリア」として認識している植物は、植物学者たちには「ラウァンドゥラ・オフィキナリス」として知られていました。その他にも「ラウァンドゥラ・ヴェラ」というラベンダーの種もあり、それに関しては植物学者たちによってフランスのプロヴァンス地方の野生種にのみ使われる名前だとされていたのにも関わらず、そうでないものもヴェラの名前で呼ばれていることがあります。

 

ラベンダー・トゥルーは南ヨーロッパと地中海地域、アフリカの熱帯地域、インド南部、現在のイラク周辺に生育する植物です。幸いなことに南フランスのアルプス山脈では、標高約2,200~3,600フィートにある小さな地域において、まだ野生種の繁殖がみられます。これらの野生の植物の大部分は主にラウァンドゥラ・アングスティフォリアですが、新種である交配種を含む他の野生ラベンダー種も含まれています。これらの野生ラベンダーから抽出された精油は、ラウァンドゥラ・アングスティフォリアとして販売されていますが、ポピュレーション・ラベンダー(Population Lavender)とも呼ばれています。

 

精油の世界では、ラウァンドゥラ・ヴェラ(Lavandula vera)、ラウァンドゥラ・アングスティフォリア(Lavandula angustifolia)、ラウァンドゥラ・オフィキナリス(Lavandula officinalis)の名前は一般的に同義語として扱われ、すべてがラベンダー・トゥルーを指しています。ラベンダー精油を購入する時には、植物の学名を確認し、ラベルに植物学名を表示していないメーカーから精油を購入することは避けるべきです。

 

補足:日本ではラベンダー・トゥルーは「真正ラベンダー」と呼ばれることがあります。

 

 

 

■その他のラベンダーについて

一般的にアロマセラピストたちがラベンダー精油について語るとき、それはラベンダー・トゥルーを指していますが、アロマテラピーではその他にもいくつかのラベンダー種があります。ラベンダー精油を購入する前に、下記のラベンダーとラベンダー・トゥルーの違いを理解する必要があります。

 

ラウァンドゥラ・ラティフォリア (Lavandula latifolia)

「スパイクラベンダー」と呼ばれるものです。この植物は地中海地域が原産で、野生でも生育しますが、しばしばラベンダー・トゥルー(Lavandula angustifolia)と同じ場所で自生しています。スパイクラベンダーはラベンダー・トゥルーに比べてカンファー成分の含有が高く、どちらかと言えばリラックスよりは刺激に向いています。スパイクラベンダーは去痰、抗ウイルス、抗真菌の作用から伝統的に風邪やインフルエンザ、真菌感染症などの症状に用いられてきました。比較的高いカンファー成分含有のために神経毒性を起こす可能性があります。そのため、アーティザンでは通常の在庫にスパイクラベンダーを加えていません。

 

ラウァンドゥラ・ストエカス(Lavandula stoechas)

「スパニッシュ・ラベンダー」またはMaritime(マリタイム)ラベンダー(=海辺のラベンダー、海岸のラベンダー)と呼ばれています。ストエカス種は地中海沿岸の原産で、現在でも野生で生育しています。ただし、他の種のラベンダーもスペインで繁殖しますし、このストエカス種は他地域でも生育するため、一般名の「スパニッシュラベンダー」は誤解を呼ぶ表現です。スパイクラベンダーのように、この種のラベンダー精油にはカンファーやケトンが多く含まれ、神経毒性があります。そのため、アーティザンでは、スパニッシュラベンダーを通常の在庫に加えていません。

 

ラウァンドゥラ・ヒュブリダ(Lavandula hybrida)

「ラバンジン」と呼ばれる精油です。ラウァンドゥラ属の一種でラウァンドゥラ・アングスティフォリアとラウァンドゥラ・ラティフォリアによる交配種です。ラバンジンはラベンダー・トゥルーに比べると豊富に収穫されるため安価です。そのため、市場にラベンダー精油として出回っているもののなかには実際はラバンジンである可能性があります。ラバンジンの作用はいくつかの点でラベンダー・トゥルーの作用に似ています。カンファー成分の含有が多いことから香りはシャープで、刺激性があります。そのため、リラックス作用よりは刺激を与える傾向があります。さらに、ラバンジンには血液凝固を阻害し、抗凝固剤と相互作用する可能性もあります。伝統的には火傷を治すと言われているラベンダー・トゥルーとは異なり、ラバンジンは火傷を悪化させると言われています。ただし、ラバンジン精油は風邪、インフルエンザ、その他の呼吸器系疾患や皮膚の真菌感染症の治療に関しては推奨されています。

 

 

■ラベンダー・トゥルー種

ラウァンドゥラ・アングスティフォリア、ヴェラ、オフィキナリス(Lavandula angustifolia /vera / officinalis)

ラベンダー・トゥルー精油はアロマテラピストたちに広く好まれているラベンダー種です。その理由には平滑筋の弛緩作用のあるエステル成分を多く含むことと神経毒性のあるカンファー成分の含有が低いことが挙げられます。アロマテラピーのスペシャリストたちは特定の用途に対しては他のラベンダー種を使用することがありますが、そうでない人たちが使用するのならばラベンダー・トゥルーが最適です。ラベンダー・トゥルーのなかでもフランスのプロヴァンス地方の高地で収穫される野生ラベンダーから抽出されるラベンダー・トゥルー精油は、最大のエステル成分を含んでいます。現在入手できるものとしては最高の品質であり、価格は最も高価です。

 

一部のブルガリア産のラベンダー・トゥルー精油のなかには、フランス産ラベンダーが持つエステル成分のレベルに近いものがあります。フランス産に比べるとブルガリア産のラベンダー・トゥルーは安価なため、多くのアロマセラピストによって使用されていますが、フランス産に比べるとカンファー成分はやや多めです。ブルガリア産ラベンダーは一般には睡眠とリラクゼーションを促進するのにあまり効果的ではないということでした。けれども、私の個人的な経験では、アーティザンのフランス産ラベンダーとブルガリア産ラベンダーの精油を比べた場合、両者の作用に関して大きな違いは見られず、どちらも眠れない時にリラックスを促してくれると考えています。ただし、アーティザンのブルガリア産ラベンダーは非常に高品質なため、他メーカーのブルガリア産ラベンダーから必ずしも同等の結果が得られるわけではないと考えています。

 

 

■6種類のラベンダー・トゥルー精油 

こちらのページを参照

 

 

■製造方法

これでラベンダー精油に関して、選択する事の大切さについて理解してもらえたと思います。ラベンダー・トゥルーについてさらに詳しく見てみましょう。

 

ラベンダー精油は、開花している花部から水蒸気蒸留法で抽出されます。原材料に花以外の葉部分も含まれているラベンダー精油は品質が劣ります。

 

フランスやブルガリア以外にもラベンダー精油は世界中の多くの場所で生産されています。例えば、フランスやブルガリア以外のヨーロッパ、イギリス、オーストラリア、クロアチア、ロシア、アメリカなどです。多くの場合、これらの他の地域のラベンダー精油に関して例外はあるものの、アロマセラピストの求める基準を満たすのに十分なパーセンテージのエステル成分は含まれていません。

 

 

■ラベンダー精油の特性

ラベンダー精油は、淡い黄色で、フレッシュなグリーン調やフローラル調の軽やかな芳香があります。特に下記の精油との相性は大変良いものです。

 

ベルガモットカモミール・ローマンカモミール・ジャーマンレモンゼラニウムクラリセージパルマローザローズマリーユーカリパチュリーローズジャスミンレモングラスマンダリンなど

 

 

■伝承と歴史

ハーブとしてのラベンダーは2,500年もの歴史があり、世界で最も有名なハーブの一つです。ラベンダーは古代の人々によって栽培、取引され、エジプト人によって香水として使われただけでなく、死者をミイラにする工程においても高く評価されてきました。イエス=キリストの時代のずっと昔から、アラビアで栽培され、去痰薬や鎮痙薬として使われていたのだと思われます。

 

古代ローマ人はラベンダーの花の香りの沐浴を好んだことから、ラテン語に由来する属名Lavandulaはlavare(ラヴァーレ)「洗う」を意味すると言われています。もしも、あなたが紫色や青色にかすんだ、息を呑むほどに美しいラベンダーの畑を見た事があるのならば、ラベンダーの語源がラテン語のlivendula(ブルーイッシュ=青みがかった)から来ている可能性がより高いであろうことに同意してくれるでしょう。

 

フレッシュやドライのラベンダーは、昔から室内の消臭や消毒に使われてきました。古代のギリシャ人とローマ人はラベンダーを使って病気を治療し、症状を和らげました。その流れは次第にヨーロッパ全土へと広がり、胃の不調や緊張の緩和剤としてラベンダーティーが、皮膚を美しくする化粧水としてラベンダーローションが、使われるようになりました。ラベンダーの花はサソリを撃退すると言われています。フランスでは、その理由から窓辺の棚にラベンダーの花が置かれています。ドライのラベンダーとラベンダー精油は、蛾を忌避してカビを防ぐのに役立つと言われています。そのため、ドライラベンダーもラベンダー精油も引き出しやクローゼットのサシェに使われています。

 

ハーブとしてのラベンダーの効能は、有名なカトリック修道院長でありヒーラーでもあったヒルデガルト・フォン・ビンゲンによって伝えられてきました。ラベンダーはヒルデガルトのお気に入りのハーブの一つであり、彼女は片頭痛に対してラベンダーの使用を推奨しました。現代でもラベンダーは頭痛のために使用されています。ラベンダーはヒルデガルトの時代には「純粋さを保つ(神に仕える清らかな心身)」ためにも使用されてきました。後の時代に伝えられたいわゆる「泥棒の酢」は、ペストが流行した中世の時代に使用されており、ラベンダーは泥棒の酢の主成分でもありました。また、ラベンダーは媚薬としてもある程度高く評価されてきました。しかしながら、私はいまだにそのような媚薬と言われるハーブを12世紀の修道女たちが「純粋さを保つ」のに役立てていたとは納得がいかないのです。

 

ラベンダーは何世紀にもわたり「魔女のハーブ」として邪悪な目、悪霊、幽霊から人々を護ると考えられてきました。ギリシャ神話では、ラベンダー・ストエカスは、異教徒らによって三相女神※の現れとして女神ヘカテの庭で見つかった植物の一つだと言われてきました。19世紀までのアメリカとヨーロッパの医師らは、女性の頭痛、記憶喪失、失神、うつ病、不妊症の治療に対してラベンダー精油を使用しました。

 

※三相女神とは、女神ヘカテの姿であり「三相一体」の女神のしるしです。三相とは、上弦の月、満月、下弦の月の三相として、少女・母親・老婆を印するものです。

 

 

 

■伝統的なアロマセラピー

ラベンダー精油はアロマセラピストたちによって、数多くの生理作用を持つことで評価されていますが、その一部には矛盾も見られるようです。精油を扱う上で、ハーブ調剤がどうして両特性と呼ばれているのかを知るとその矛盾が理解できるでしょう。「両性」という言葉は、「両方」を意味するギリシャ語に由来し、ハーブ調剤におけるハーブの両性とは、身体に必要な作用を両面的に発揮するものです。これは例えば、ラベンダー精油が子宮弛緩と子宮刺激の両方の作用があるとされる理由です。

 

伝統的なアロマセラピーで報告されている作用の例

鎮痙(平滑筋、例えば子宮)、抗うつ、抗不安、抗菌、軽い局所麻酔、鎮痛、抗炎症、抗真菌、鎮静、抗アレルギー、免疫賦活、精神高揚、子宮弛緩、子宮刺激

 

ラベンダー精油の作用に関してはいくつかの情報元で用量に関連する記述があります。ラベンダー精油は4滴以下ではリラックス作用がありますが5滴以上になると刺激作用となります。

 

適応

皮膚のトラブル、耳の痛み、咬傷、虫刺され、頭痛、筋肉痛、月経痛、軽度の火傷、日焼け、風邪、インフルエンザ、喉の痛み、日常的な胃痛、吐き気、坐骨神経痛、睡眠の問題

 

 

■中医学におけるラベンダー精油

ラベンダー精油は古代の中医学では使われていませんでしたが、ガブリエル・モージョイ、デニス・ウィルモント、ピーター・ホームズに代表される現代のアロマセラピー実践者らによって中医学に組み込まれました。

 

エネルギーの性質:冷却(モージョイ)、冷却と温熱(ホームズ)、乾性

主たるエレメント:火、木

 

ラベンダーは気を活性化させて停滞しているものを解放させます。(これは多くの種類の痛みを和らげるのに良いと考えられています)、月経の調整、循環促進、鎮静、気の流れをスムーズにするのに役立ちます。中枢神経系を調整して、肝臓の熱を調整して鎮静させます。木のエレメントとして肝臓に停滞したエネルギーを解放させ、落ち着かせます。

 

気に対する適応

心を落ち着かせ、安定させ、Shen※を養い、育てます。ガブリエル・モージョイは、ラベンダーのことを身体、心、スピリットをリフレッシュさせ、新しくする「アロマティック・レスキューレメディ」と呼んでいます。

※Shenとは、中医学における霊的な要素、内なる神、神性のこと。

 

中医学の適応

気が停滞した状態(中医学では緊張感、胃痛、精神動揺、腰痛その他の多くのトラブルに関連すると考えられている)、過剰な火・陽の気が多すぎる状態(落ち着きのなさ、動揺、不眠、精神過敏、めまい、動悸および身体の痛みを引き起こす特徴的な状態)をなだめ、交感神経の過剰な優位を落ち着かせ、回復させます。Shenを妨害するあらゆる種類のもの(PTSDやそれに関連する状態)、創造性をブロックさせるもの、恐れ、慢性的なネガティブ習慣のパターンなどを解放させます。

 

 

 

■安全に関する現在の情報

ラベンダー精油は、アロマテラピーに使用される少量(1回の使用で最大4滴)の外用であれば無毒であると考えられており、通常使用においては非刺激性です。かつてラベンダー精油はアロマテラピストたちには皮膚に無希釈で使用することが安全と考えられてきましたが、近年では感作(アレルギー)の報告例が増加しています。ラベンダー精油は原液で使用せず、局所使用には植物油で希釈するのが賢明です。(部分塗布で最大5%、全身への塗布では3%以下が推奨)ラベンダー精油には眠気を催す可能性があるため、注意を要する活動や運転などを行う場合には使用しないでください。

 

数年前、ラベンダー精油の使用が男児の乳房異常発症(精油中のエストロゲン作用によるものと推定される)と関連があると主張した研究についての報告が流布されました。この研究は方法論の根拠がない事から広く批判され、ほとんど信頼性はありません。2013年のPolitano et alによる研究では、ラベンダー精油が生体内でエストロゲン作用を及ぼさないことが発見されています。

 

なお、医師の許可のもと、または看護師のような訓練された医療従事者の監督下でない場合は精油を内服するべきではありません。

 

講師からの補足

ラベンダー精油とエストロゲンに関する記述はロバート・ティスランドのWebサイトでも確認することが出来ます。

https://roberttisserand.com/2013/02/lavender-oil-is-not-estrogenic/

出典記事:「ラベンダー精油はエストロゲンではありません(Lavender oil is not estrogenic)」

 

記事監修:ジョーイ・パワー医師(2017年7月1日)

翻訳監修:堀弘明・堀浩子